ネオ・オキスタ

[豊見城南vs宮古 ： 豊見城南の呉我春宝は、しなやかな腕の振りで好投]


　興南、豊見城南が決勝へ！九州大会出場を決める！！
　　　
　第58回沖縄県高等学校野球秋季大会十二日目の 10月5日は､ 北谷公園野球場で準決
勝2試合が行われ､ 興南､ 豊見城南が それぞれ決勝進出を果たしました。 興南は5年ぶり
10度目、豊見城南は16年ぶり3度目のファイナル進出となりました。 興南､ 豊見城南の両
校は､10月24日から佐賀県で開催される「第123回九州地区高校野球大会」へ 沖縄県代
表として派遣されます。

　北谷公園野球場で行われた準決勝の第一試合「興南vs浦添工業」は､興南が1年生左腕
の島袋洋奨、 浦添工業が右腕の運天ジョン・クレイトン と、両好投手の先発で始まりました。
試合は まず興南が先手を取りました 。2回裏の興南は､この回の先頭・冨里川の右線へ落
ちたテキサス性の当りが二塁打になると、 続く石川のバスターエンドランが一塁手の頭上を
越える右前安打となり、無死13塁の好機を迎えました。 ここで投手が三塁へ牽制球を投げ
た間に一走・石川が二盗、 すると三塁手の二塁への送球が悪送球となり、 三走・冨里川が
生還しました。 更に犠打で1死3塁としたところで、山川が中犠飛を放ち、この回興南は計2
点を先制しました。 興南は3回裏にも、 1死から國吉が二遊間突破の中前安打で出塁する
と､與那嶺も三遊間を破る左前安打で続き1死12塁。 そして暴投で1死23塁となったところ
で安慶名が右前適時打を放ち3-0としました。 一方の浦添工は4回表､ この回先頭の新里
が敵失で出塁すると､ 続く安次富の投前犠打が内野安打となり、更に西原の三塁前犠打も
同様に内野安打となり､無死満塁としました。この好機に手登根が右前へ2点適時打を放ち、
2-3と1点差に詰め寄りました。 ところが興南は5回裏､この回先頭の慶田城が二遊間突破
の中前安打で出塁すると 1死後國吉が中前へテキサス安打､ 続く與那嶺の三投間への犠
打も内野安打となり1死満塁としました。 そして安慶名が左翼へ犠飛を放ち、 興南は4-2と
再び点差を広げました。 興南はその後、この回2死満塁と攻め立てますが、浦添工業は投
手を巨漢の比嘉元樹にスイッチ。 比嘉はベンチの期待に応えて､ 7回まで無失点の好投を
見せました。しかし興南は終盤､ その比嘉をも捕らえます。8回裏の興南は、 この回先頭の
石川が 右前へのテキサス安打で出塁すると､ 続く眞栄平が 右中間を真っ二つに破る適時
三塁打を放ち 一走・石川が生還、 更に山川の遊ゴロが1塁悪送球となり 三走・眞栄平も生
還して なおも無死2塁､ そして犠打で1死3塁となったところで 島袋が右前へ適時打を放ち、
この回の興南は 一気に3点を挙げました。 浦添工業は 9回表､ この回から代わった 興南・
石川清太を攻め、 手登根、仲里の連続安打で 無死12塁としましたが、再びマウンドに戻っ
た島袋が三者三振で締め､ 試合は結局7-2で興南が浦添工業に快勝。 5年ぶり10度目の
決勝進出を決めました。
　この試合でも 興南の1年生サウスポー・島袋の投球が光りました。 9イニングを投げ内野
安打2本を含む 被安打6の 7奪三振､与四球1。 切れのあるストレートに スライダー・カット
ボールが冴え､ 抜群の制球力と相まって安定感では群を抜いていました。 この日は失点を
許した4回表以外にも、 7回表の無死満塁、最終回の無死12塁と ピンチの場面に立ちまし
たが､力のある投球で難なく抑え込みました。また最終回に登板した大型右腕の石川は、い
きなりの2安打を喫しましたが、素晴らしい直球の伸びを披露して復活を印象付けました。
　浦添工業の運天は 興南の機動力に振り回された上に、 制球が甘くなったところを狙われ
ました。 この日は自慢の直球とスライダーも精彩を欠き、なすすべがありませんでした。 今
後は、 一冬越えての制球力アップと フォームの安定に磨きを欠けて欲しいと思います。 こ
の日2番手で登板した 浦添工業・比嘉は､ 直球・変化球ともに申し分なく､ 更に優れた制球
力が光りました。フールディングも 巨体の割りに軽快で、能力の高さを伺わせました。 いず
れにせよ､ 運天・比嘉の2投手の素質は充分で､ 2人とも まだまだ大きく伸びる可能性に満
ちています。 これからも互いに切磋琢磨して、春には一段と成長した姿を見せて欲しいと願
います。



[興南vs浦添工： 興南は2回裏､敵失で三走・冨里川奨也が生還して先制]


[興南vs浦添工：浦添工は4回表､手登根の2点適時打で新里一貴が生還]


　続く準決勝第二試合「豊見城南vs宮古」は､ 豊見城南が呉我春宝、宮古が長浜謙太と両
右腕エースの先発で始まりました。 試合は 互いに初回の先頭打者が安打で出塁するも併
殺で2死無走者となるという､同じような展開で始まりましたが、勢いのある豊見城南は 後が
違いました。1回表の豊見城南は 2死無走者から山城が敵失で出塁すると、上原勇が右中
間へ弾き返す右前安打で2死13塁としました。 この好機に 大城が三遊間を破る左前適時
打を放ち、豊見城南が1点を先制しました。 更に豊見城南は 2回表､ この回先頭の比嘉が
中越えの三塁打で出塁すると､ 続く呉我が 中前へテキサス性の適時打を放ち 1点を追加、
2-0としました。 対する宮古は2回裏､ この回先頭の川田が左翼手左への強烈な二塁打で
出塁すると、 2死後､ 伊佐が中前へ適時打を放ち1点を返しました。 ところが豊見城南は3
回表、この回の先頭・山城が一塁線内野安打で出塁すると、 2死2塁から砂川が左越え適
時二塁打を放ち、3-1と再び点差を広げました。 試合はその後も豊見城南が押し気味に進
めるも、宮古も好守で凌ぐ展開でそのまま中盤まで進みました。 そして迎えた6回裏、この
回の宮古は、 先頭の平良が二遊間突破の中前安打で出塁すると 元長の犠打と川田の左
犠飛で2死3塁としたところで、松原の三遊間への深い内野安打が悪送球を招き三走・平良
が生還。 更に2死2塁から仲間将が左前へ適時打を放ち、 この回2点を返した宮古は遂に
3-3の同点に追い付きました。その後両チームとも､互いに危機を耐え凌ぐ息詰まる展開が
続きましたが、最終回、遂に均衡が破れました。 9回表の豊見城南は、先頭の上原勇が右
線への二塁打で出塁すると､ 大城の犠打で1死3塁としました。 ここで宮古ベンチは2者連
続の敬遠で満塁策をとり､ 1死満塁としました。 ここで 呉我のスリーバントスクイズは投前
に強い当りで転がりましたが、投手・長浜がお手玉をして三走生還、更に1塁への送球も悪
送球となり二走も生還､ 豊見城南が2点を勝ち越しました。 そして 2死13塁から再び敬遠
の満塁策で2死満塁となったところで 平田が三遊間突破の左前適時打を放ち､ ここに来て
豊見城南は一挙3点を勝ち越しました。 追いすがる宮古は9回裏､ 1死から仲間将が二遊
間突破の中前安打で出塁するも後続続かず、試合は6-3で豊見城南が宮古との大激闘を
制し16年ぶり3度目の決勝進出を果たしました。
　この試合では､ とにかく豊見城南の思いっきりの良い攻撃は勿論、宮古の粘り強いディフ
ェンスが観客を盛り上げました。終始防戦一方に立たされた宮古は、ほぼ毎回危機の連続
でした。 2点目を失った後の2回表は2死3塁を抑え､ 4回表には1死12塁を併殺で切り抜
け、 5回表は1死2塁､ そして6回表には2死満塁を凌ぎ、 1-3の点差が広がるのを許さず
同点劇に繋げました。 また同点後の7回表は2死3塁、8回表には1死満塁と、迎えた再三
のピンチを耐え抜きました。 この厳しい状況で最終回まで堪えてきただけに､9回表に連続
して出たミスが悔やまれます。また攻撃でもいつもの冴えが見られませんでした。4回裏に
は無死2塁の好機を活かせず、6回裏の同点後には2死3塁から勝ち越す事が出来ません
でした。 そして極めつけは7回裏。 この回先頭の石垣が投前内野安打で出塁するも､ 続く
長浜が 一旦は送りバントの構えをするも バスターを敢行、 二遊間へ転がった打球は絵に
描いた様な併殺となりました。 次が1番からの好打順だっただけに、 宮古は絶好の勝ち越
し機を逸してしまいました。しかしこの場面、 打者・長浜は相手一塁手の動きを見て咄嗟の
判断で一塁頭上を狙ったと言います。 サインは送りバントだったそうですが､ 結果として最
悪の形になったとは言え､ この自発的思考と瞬間的判断力は、必ず今後に繋がるでしょう。
　豊見城南には本当に驚かされました。 思いっきり振り抜く力強いバッティングに積極果敢
な走塁と、 もはや勢いだけでは済まされない確かな実力を有しています。 相手校・宮古の
長浜投手は決して大崩れする事の無い好投手です。 特に低めに制球されるツーシームの
攻略は容易では無いと思われます。 しかし豊見城南打線は､その難しい変化球をフルスイ
ングで打ち抜き､ 実に長短16安打も放ちました。 1番から9番まで切れ目の無い打線は先
発全員安打で､6人がマルチ安打、しかも7番の比嘉が3安打も放つ暴れようでした。そして
町田監督の采配にも唸らされました。特に9回表の攻防は非常に見応えがありました。1死
13塁の場面では、相手に対して常にスクイズを意識させ､ 結局満塁策を取らざるを得ない
状況に追い込みました。そして1死満塁でのカウント2-2で､呉我がスクイズを決行。この打
席、ストライク先行から強振して3塁線へのファウルを放った呉我が バントをする気配は全
く感じられませんでした。それが、いきなりのスリーバントスクイズです。満塁の状況で強め
の打球が投前に転がったのですから､ 宮古ベンチとしては対応策が成功したと言えるので
すが、意表を突いた作戦に投手の長浜が焦ってしまいました。 つまり豊見城南ベンチの強
気の采配が功を奏したのです。 選手･ベンチが一体となり 強気強気で攻めまくる豊見城南
は強いチームです。 更に極め付けが、エースの呉我春宝投手です。手足の長い細身長身
の眼鏡小顔は､一種独特の存在感を漂わせます。　しなやかな腕の振りから放る直球は球
速こそありませんが、球筋、球持ち共に良し。 そして何と言ってもカーブが素晴らしく､沖縄
随一の強打を誇る宮古打線が完全に翻弄されました。気迫溢れる投球スタイルもセンスに
溢れ、今後がとても楽しみな魅力溢れる投手です。 とにかく全てに面白い豊見城南の､ 次
の決勝戦、そして九州大会での戦いぶりから目が離せません。



[豊見城南vs宮古： 豊見南は9回表、1死満塁で呉我がスクイズを決める]


[豊見城南vs宮古： 宮古は2回裏、伊佐の中前適時打で川田将平が生還]


大会第13日目の10月11日は､北谷公園野球場で決勝戦が行われます。


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